太宰治の小説『ヴィヨンの妻』の映画版を見てきました。
『ヴィヨンの妻』は読んだことがなかったので、
昨日本屋で買って読んだところ、
短編だったので映画を見る前に読み終えました。
酒を飲んで、女と遊び、泥棒までするという
ダメ亭主を持った女の、それでも男を想い続ける夫婦愛のような話。
なのですが、太宰の退廃的作風が、微妙な後味の悪さを残してます。
映画版はなんと始めの30分で『ヴィヨンの妻』はほぼ終わりです。^^;
残りの1時間半は映画オリジナルか、他作品からの引用かわかりませんが、
太宰作品がモチーフになっていることは間違いありません。
松たか子、浅野忠信が主演で、広末涼子、妻夫木聡、堤真一らが共演。
映画としては非常に良かったです!
昔から太宰作品が好きで「人間失格」「斜陽」を始め、
短編もたくさん読んできたけど、この映画を見てふと思った。
おれは太宰の人間性はあまり好きじゃないかも。^^;
主人公の夫は太宰の分身であり、妻は彼の理想なのかもしれない。
けど、その妻も最後には過ちを犯す。
これは「人間失格」でも似た場面があるけど、
太宰は人を信用したいのに信用できない、
だから自分も罪を犯す、みたいな退廃的思考に陥る傾向があって、
それが彼を苦しめ、狂わせ、死を意識させるんですよね。
それを昔は未知の境地のような気がしていたけど、
今思うと愚の骨頂でしかないという気がしてきた。
それでも彼の文学は大好きですけどね。
衝撃的な展開や、印象的なフレーズ、道化の裏の深い影等、
太宰の文才は影響受けずにはいられない力がありますよね。
それに人間の弱さをこんなにも赤裸々に美化せず書かれていると、
やっぱ部分部分で共感しちゃうというか、変に安心しちゃうというか、
きっと彼の負の性質は、人間誰もが持っているものだからこそ、
これだけ多くの愛読者を持つ作家になったんでしょうね。
太宰生誕100周年記念で映画をいくつか上映していますが、
来年2月に『人間失格』をやるみたいなので、
これはぜひ見てみたいです。